清水宏章(清水六兵衛窯)

■出来上がった[和菓子の為の菓子道具]を前に、普段のお仕事と今回のお皿についてお話をお伺いたしました。
[聞き手:金谷亘(京菓子司 金谷正廣)]

-普段のお仕事について簡単に教えていただけますか?
清水宏章:自社ギャラリーやWEBサイトで販売する【六兵衛窯】の茶道具や一般食器や”、 割烹食器"と呼んでいる日本料理・料亭で使われる食器の製造、他にも茶道具のオーダー、 料理屋さんのオーダーも多くいただいています。
製造工程の中では主に轆轤を担当しており、他にも絵付けの職人など専門の職人と数名で作業しております。
自身の作品や特殊なオーダーは一人で作ることが多いです。

-お仕事の他に作家として活動されているのですか?
父親(現清水六兵衛当主)も含めて歴代の当主は自分の作品を作っています。
といっても僕は、「どうしても自分の作品を作りたい!」と思って始めたわけではなく、 自分の師匠に当たる方に「個展をしなさい」と言われて初めて自分の名前で作品を作り始めました。
六兵衛窯の商品では伝統的なデザインを継承しており、過去と現在含めてみんなで作るという意識ですが、 個人作品ではその時に思っている良いと思う物を作り、責任は全て自分です。
どちらも違った楽しみがあります。

-オーダーに関して
お茶人様や料理人様などからいただいております。
お茶道具は他の道具との取り合わせなどを考えご注文いただくことが多くあります。
お料理用は普段の割烹食器だけではなく、フレンチや中華などのお店でオリジナルのお皿を揃えられるという事もございます。
どちらも、ご注文者様のご要望を取り入れ、ご納得していただけるものができるように尽力しております。


-今回の[和菓子の為のお菓子皿]の制作過程に関してお聞きします。まず、サイズはどのように決まったのでしょうか?
普段の割烹食器は「利休盆」のサイズ感に合うように作ります。
そのサイズを考えると、ある程度誰が作っても同じようなサイズ感になるんですね。
納まりがよいのか、それを見慣れているからしっくりくるのか分からないのですが。
ですので、利休盆を基準とした日本のサイズ感、具体的には「寸」という尺度は意識しました。
今回は和菓子という事を考えて4.5寸程度になっております。

-私も和菓子を作る時には当たり前に決まったサイズ(グラム)で合わせて作っています。
同じ尺度を使っているというのは、いろいろな人が関わるお茶や料理の美意識の統一感を担っているのかもしれないですね。
形状はどのように決まったのですか?

ご相談させていただいていた段階で、影が映らないようなお皿というお話を聞いていましたので、潔くリム(お皿の縁)のないデザインと、 少しだけリムのあるデザインの二種類を制作いたしました。
影を出なくするにはリムを低くして太くするというような形状が一般的に思いつかれるかもしれませんが、 どうしても西洋食器の雰囲気が出てしまいます。
モダンな雰囲気の中にもあくまでも和菓子に合うようにと考えました。

-かなり思い切った薄さですよね。
通常、抹茶茶碗などは畳の上に置いたり亭主や客が手に持って動かすことからか有る程度の高さのあるものが基本だと思いますが、 テーブルの上で使うならということで割り切りました。
リムが高いと水っぽい料理を盛り付けてもこぼれませんし、傾斜のあるお皿だと汁物が円形に止まってくれます。
また、周りの埃が入りにくいなど機能的な点もあります。
それと同時に、リムというのは視覚的にはテーブルとの境界線になるんですよ。
影が出ないような高さでもリムが有るのと無いのとでかなり違った印象になりました。


-確かに。お菓子を平面的な懐紙の上に乗せている状態に比べると、よりくっきりと和菓子が浮かび上がる印象を受けました。 「絵画を壁にかけるときに額をつけるかつけないかで印象が変わる」ような感じです。
高台は少しついていますが、ここまで低いのならなくても良いのでは?とも思いましたが。

テーブルの上に置くことを前提としても少し指の入る隙間がないとこの薄さでは手に取りにくいですね。
陶板のように有る程度の分厚さを持たせれば可能ですが、そうすると、このような軽やかな印象にはならないと思います。
また、上部をなるべく水平にしようとすると、この形状が作りやすいというのもあります。

-以前高台のお話をお伺いしたときに、上からみても見えない部分の薄さにかなりこだわってらっしゃいましたよね?
やっぱり手に持ったり使うときにいろいろな方向から見たりする物なので、見えない部分でも絶対印象は変わります。 手に取った時に感じる重さは、実際の重量と手に触る部分とのバランス、見た目で決まってくるので重要な要素だと思います。

-なるほど。基本的に手に取る可能性があることまで想定されているんですね。 今回のお皿でサイズ感以外にも割烹食器も作っている職人だからこそこうなった、というような部分はありますか?
渦の文様ですかね。
世界各国にもある文様ではあるのですが、和食でもよく使われます。
季節感や意図があるものは、やはり日本的だなぁと思います。


-季節感というのは確かに自分の中からは出てきにくい発想ですよね。
何かを伝える為に文様を描くというよりは、使う人、それで食事をする人に何を感じてもらうかということを想定するということですね。
意図があるというのはどういったことなんですか?

例えばサンプルでお見せした六兵衛窯の商品なのですが、これは波の文様を描いています。
西洋食器でしたら白いお皿に食材やソースで全てを表現することが多いと思いますが、 日本料理ではお皿に描かれた文様やお皿の形を「見立て」て他の食材を盛り付けることが多いんです。

-「真っ白なキャンパスに向き合う」というよりは、「自然とそこに有る物に手を加えて美しく仕立てる」という感じですね。
それはとても日本的な美意識だと感じます。 また、同じ「波の絵」 でもアートではなくて文様として共通認識があることによって食事をする人が楽しめるというのは日本文化の良い点でもあり、 伝わりにくい点でもありますよね。

今回のような渦に関してはそこまで文様化されてお約束があるわけではないですけどね。
渦は例えば水面や空や風や空気、 目に見えない物にも見立てることができますので、和菓子と合わせて何か相乗効果的に意味合いがプラスされれば大成功だと思います。


-確かに、食べるのが自分だったとしても「盛り付ける」というのはそういうことかもしれないですね。
ちなみに普段ご自身の作品としてお作りになっている実用食器と今回のお皿、比較するといかがですか?

やはり用途が絞られていますよね。
普段はいろんな用途でお使いいただけるように、あまり盛り付けられるものを想像しないで作ることが多いです。

-たしかにご相談させていただいている時に「いろんな用途」という言葉をよくおっしゃっておりましたね。
実用食器だと、それにプラスして使いやすさを考えます。
やはり人の手に渡った瞬間、 そのお皿に何を乗せるかということはその人に委ねるわけですから、いろいろな用途を想定します。
もちろんこのお皿も和菓子以外のものを載せてもよいですし、結果的にいろいろなことに使っていただいてもよいのではないでしょうか。

-実は当初和菓子専用のお皿を持っているから「和菓子買おう」と思ってもらって全国の和菓子が ちょっと売れたらいいなぁというのが裏テーマであったんです。
ですが、今回このようなコンセプトを踏まえて出来上がったものを、楽しんで使ってもらえたらなんでも良いなという思いもあります。
実際普通に焼売とか乗せても美しいと思いますしね。

普通に野菜とかね。
かといっても料理には使いにくいだろうなぁと思いながらかなり割り切って作っております。


-潔いですよね。でもだからこその独特の佇まいになっているんだと思います。
他にも造形や文様に関してなにかございますか?

写真撮影時に光の反射量が和菓子より目立つ他ない方がよいというお話をお伺いしていましたので、半マットな釉薬を使用しています。
文様に関しては全てフリーハンドで刷毛目を残しています。
一つ一つ違う表情になるという点も日本的な美意識なのかなと思いますので、お楽しみいただけたらと思います。

-ありがとうございます。
それでは最後に六兵衛窯のお仕事、ご自身の作品作りなどでお忙しいとは思いますが、このようなオーダーや別注商品の開発に関してはいかがですか?

オーダーは特に毎回が新しいチャレンジになることが多いので、楽しんで取り組んでいます。
みなさんが思っている以上に時間がかかりますのでなかなか厳しい部分もあるのですが、是非一度ご相談ください。

2020/12/7