(二代)鈴木表朔
二代表朔(1905-1991年)
1905年(明治38年)京都に生まれる。
父である初代 表朔に師事。
1926年(大正15年)21歳のときに聖徳太子奉賛展入選を果たし創作活動を本格的に開始する。
その後、京展、帝展、文展、パリ万博など精力的に出品。
1991年(平成3年)ご逝去。
『漆器棚引棚』
1937年 京都市美術館蔵
初代表朔は、茶道具をはじめとした漆工芸作品を作られており、京塗表派の後継者。(江戸末期 京塗師木村表斎を祖師とする京塗の主流)
2.3.4代目と、現代まで続いておられます。
今回の作品は[二代表朔]1937年ですので、32歳頃の作品です。
豪華な作りの棚の表に「雲」をモダンに文様化したものを見事に塗り分けています。
実際の作品を見ると、木地の時点で文様の境界は高低差がついて掘られており、そのきっちりとした線の影が立体感を演出しています。
和菓子のコンセプト
長方形にカットし、ずらした形状は反復する雲の文様を、色は塗り分けられたグラデーションを表しています。
漆の作品にちなんで、アールグレイやハイビスカスといった天然素材を使用し、昭和初期のモダンをイメージしました
展示と販売
京都市京セラ美術館ミュージアムカフェ ENFUSE様、京都市京セラ美術館(京都市美術館)様にご協力いただきました。
京都市京セラ美術館 コレクションルーム春の展示期間中、ENFUSE様にてご提供させていただいております。
京都市京セラ美術館
[2023 春期]コレクションルーム魅惑の昭和モダン」
※観覧料等詳細は、美術館サイトにてご確認下さい。
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20230310-20230618
【工芸とデザイン】
明治から昭和にかけて、明治維新や産業革命などに伴い漆業界も浮き沈みがあったそうです。
作品の生まれた1937年は昭和12年。
デザイン的な時代背景は、1925年ごろから、アール・ヌーヴォーに続き、アール・デコの時代がやってきました。
アール・デコの特徴は「幾何学図形をモチーフにした記号的表現や原色による対比表現など」と言われています。
日本の伝統的な「雲」の描き方を幾何学的に図形化し、単色ではなく6色の漆で塗り分ける、というのは、まさにそれなのですが、今、
私がアール・デコと聞いて思いつくような雰囲気ではないという点が面白く、単純にマネをする、西洋化するということではなく、
新しい美しさを創造しようとしていたのだとうと想像できます。
【工芸と時代背景】
昭和2年(1927年)から帝展には工芸部門ができていました。
帝展(名前がコロコロ変わっていますが現在の日展につながっているそう)の記録には
「〜オリヂナリティを最も尊重すると共に、また實用としては左程でなくても、装飾美の高調した芸術味の豊かなものを選んだのではあるといはれる。〜」
つまり、使用する利便性などは置いておいて、装飾的で美しいものを選んでいますというようなことだと思います。
ちなみに民藝運動が始まったのは1926年。
なんとなく、現代の職人さんとお話しているとどちらかというと民藝っぽい思想をされている方が多い(私の経験上)ような気がしています。
民藝は用の美といわれますが、「〜生活に根ざした民藝は用に則した「健全な美」が宿っていると〜」というような考え方。
これは、業界全体の雰囲気が先の帝展のような「美」を追求していること、「生活に根差さない美を追求した作品がたくさん生まれている」
という状態だからこそ生まれた反逆の思想だったのではないかと思います。
そんなそう考えると、ある意味、保守本流を引き継いだこちらの作品、また、この時期のモダンで素晴らしい工芸作品の数々を見るのが楽しみです。
(今回のコレクションルームでは、その辺りの作品がたくさん展示されるそうです。)
*参考資料
作品について、今季のコレクションルーム担当学芸員の大森様にレクチャーをいただきました。